乳香・FRANKINSENCEを訪ねて

15年ほど前から研究していた香料の一つ、FRANKINSENCE(乳香)を訪ねて、アラビア半島の南端に位置するオマーンのドファール地方へ行って来ました。
乳香とはアラビア半島原産の香料で、原料はカンラン科の木の樹脂。古代エジプト人やユダヤ人の間で、乳香は「神への貢物」として知られ、聖書に登場する東方の三博士がイエス・キリストの誕生の際に贈った品物(金、没薬、乳香)の一つだったといわれているのは有名な話。
南アラビアを統治したという伝説のシバの女王(BC10世紀頃?)は、ソロモン王への贈物として乳香を持参したと伝えられています。
とくに古代ギリシアやローマ帝国で乳香は、宗教儀式だけではなく、医薬品、軟膏、香料としてたいへん珍重されました。
原料になるかん木が多い地域や、香料の加工施設、古代からの交易拠点など、オマーン南西部ドファール地方の一帯が、2000年、「乳香の道」としてユネスコの世界遺産に登録されました。昔から、良質な乳香の産地として知られる、このドファール地方は、ローマ帝国への通商路が確立した紀元1~2世紀に乳香交易で最大の栄華を誇った海と陸の通商路として栄えて、古代からイスラム王朝期まで、つねに南アラビア文明の中心地だったそうです。
乳香は、とくに湾岸アラブ諸国を中心に、宗教儀式やもてなしには欠かせない最高級な香煙として実生活の中で用いられたり、高級な香水の原料として使用されたりするなど現在に至るまで大変貴重な物として扱われています。